いつもと変わらぬその日の朝。
既に学校へ行く用意を整え、食卓に着いたシンジが、ペンペンと一緒に朝食を食べていると、寝起きでボサボサの髪とよれよれになった寝間着のダラしない姿格好で、ミサトが自室から出てきた。
そんなミサトを、シンジは半ば呆れ顔で見ながらも一応「おはようございます」と、朝の挨拶をする。
すると、ミサトは大きな欠伸を一つしてから、ボヤけた声で返事を返すと、そのまま冷蔵庫へと向かい、中からビールを取り出して、席に着く。
そして、缶を開け、のどをゴクゴクと盛大に鳴らしながら一気に飲み、一息付くと、なんとも気持ちよさそうに息を吐き出した。
みなが幸せになるために
第七話 『大人の戦い』 by翔矢
日は変わり、今日もシンジはキチンと学校へ行く用意を整え、いつも通りペンペンと一緒に食事を食べていると、ミサトの部屋の扉が開く、ガラガラという音が鳴り、今日も見っとも無い格好なんだろうなぁ、と思いつつ、ミサトの方を見たシンジとペンペンは、まるでサードインパクトでも起きたかのような顔で固まり、ペンペンに至っては好物の魚まで床に落としてしまった。
そして、止まった時を動かすように、ミサトが「おはよう」と、短く朝の挨拶をする。
「おはようござい、ます」
まだ戸惑いを隠せないのか、切れ切れではあるが、シンジも何とか返事をする。
そして、ミサトは朝食も食べず、ビールも飲まずに玄関へ向かうと靴を履きながら、用事の内容を伝える。
「今日は仕事で、旧東京まで行ってくるから。帰りは遅くなると思うから、何が出張って。じゃ」
そう言ってミサトが出て行ってから数秒後、JAの事をミサトの一言で唐突に思い出したシンジは、「あー!」と、一つ大きな声を挙げる。
それに驚いたペンペンは、ようやく気を取り直してくわえ直した魚を再び床に落とす羽目になってしまい、シンジを恨みがましい目で見つめていた。もっともシンジの方ではそれに気付く様子も無かったのだが。
セカンドインパクト以前の日本の首都であり、現在は第28放置区域とされる旧東京都心の上を、JA披露記念会の会場へと向かうVTOL機が飛んでいく。
その窓からミサトは下を覗き込み、何気無しに独り言を呟く。
「ここがかつて“花の都”と呼ばれた大都会とはねぇ…」
その独り言には全く耳を傾けず、目的地に着いた事をリツコが告げる。
「着いたわよ」
「なにもこんな所でやらなくてもいいのに…で、その計画に戦自は絡んでるの?」
「戦略自衛隊?いえ、介入は認められず、よ」
「どーりで好きにやってるわけね」
そうして二人を乗せたVTOL機は目的地へと降り立った。
日本重化学工業共同体の社長であり、JAの開発責任者である時田シロウの、開発記念スピーチは、万雷の拍手で迎えられた。
「本日はご多忙の所、我が重化学工業共同体の実演会にお越し頂き、まことにありがとうございます。皆様には後ほど管制室の方にて通し運転をご覧頂きますが、ご質問のある方は、この場にてどうぞ」
そう言うと同時に、大きな円テーブルにミサトとたった二人で座っていたリツコの手が素早く上げられる。
それを見た時田は、皮肉めいた口調でリツコに挨拶をした。
「これは、ご高名な赤城リツコ博士。お越しいただき光栄の至りです」
「質問を、よろしいでしょうか?」
リツコが口調に棘々しさを滲ませながら時田に聞く。
「ええ、ご遠慮なくどうぞ」
「先ほどのご説明ですと、内熱機関を内臓とありますが」
「ええ、本機の大きな特徴です。連続150日間の作戦行動が保障されております」
「しかし、格闘戦を前提とした平気にリアクターを内臓する事は、安全性から見てもリスクが大きいと思いますが」
「5分も動かない決戦兵器よりは役に立つと思いますよ?」
「遠隔操縦では緊急対処に問題を残します」
「パイロットに負担を掛け、精神汚染を起こすよりはより人道的と考えます」
時田が操縦者の話に触れた途端、今まで退屈そうにしていたミサトの顔が急に強張るが、誰も気が付かないで、そのまま話は進められる。
「人的制御の問題もあります!」
「制御不能に陥り、暴走を許す危険極まりない兵器よりは安全だと思いますがねぇ」
ここでもまた、硬かったミサトの表情が、今度は怒りへと着実に変わっていくが、やはり誰も気が付かない。
「制御出来ない兵器など、全くのナンセンスです。ヒステリーを起こした女性と同じですよ。手に負えません」
「そのためのパイロットとテクノロ…」
リツコが答えようとした、その時だった。遂にミサトが癇癪玉を破裂させ、ブチ切れた。
「ふざけるんじゃないわよ!」
そう言ったミサトのあまりの声の大きさに、周りは一瞬静かになるが、そんな事お構いなしにミサトは怒鳴り続ける。
「あんた、さっきから聞いてれば知ったふうに喋ってるけどね!実際はそんな口でへらへらと言えるほど甘いもんじゃないのよ!大体、兵器、兵器、兵器ってね!こっちは人が直接乗って戦ってんのよ!そんなふうに軽々しく言って、パイロットを馬鹿にしてんじゃないの?!」
ここでようやく気を取り直した時田が、茶々を入れる。
「だったらどうだって言うんです?大体、暴走を許すなんて、そもそもパイロット側にも責任があるんじゃないですか?」
「あんた、もう一回それを言ってみなさい!ただじゃおかないわよ!次またシンジ君達をを馬鹿にしたら、シンジ君達が許しても、私が許さない!覚えておきなさい!」
そう言ったミサトは、未だ唖然としている周囲を余所に、リツコに「帰る」とだけ告げると、出口へ向かっていき、リツコもその後を追っていった。
結局その後、リツコが試運転だけでも見ないかと提案するのを頑なに跳ね除け、遂にリツコも諦めて、ミサトとリツコは帰りの空にいた。
「ふぅ、これじゃなんのために来たのか分からないじゃないの。どうしてくれるの?」
「そんなに見たかったなら、リツコ一人で見れば良かったじゃないの」
「無茶言わないでよ。あなたがあんなにキレた後に一人でいれる程私の神経も太くは無いわ」
「ふぅん」
「ふぅん、て…」
あまりに自分勝手なミサトに、リツコは溜め息を吐く。
そして、しばらくの沈黙―恐らくリツコは自分を平常心に戻すために、ミサトはただ単に喋る必要が無いから―の後、リツコが、今度はミサトの親友としての言葉を漏らす。
「でも、あなたがシンジ君の事であんなふうにキレるとは思わなかったわ」
「だって、シンジ君の事馬鹿にされてるみたいで、悔しかったんだもの」
「ふぅん、変わったわね」
「変わったって…何が?」
「あなた自身が、よ。つい最近までパイロットの事なんかは、ミサトのお父様に対する復讐の駒くらいにしか思ってなかったんじゃないの?」
このリツコの不意をつく鋭い言葉にミサトは、対応出来なかった。
「…へ?」
そう言ったミサトの呆け顔がおかしかったのか、リツコは珍しく、クスクスと笑いながら話し続ける。
「あら、なんで分かったの?…って顔ね」
「う、うん」
「何年あなたの親友やってると思ってるの?それ位分かるわよ。特にミサトって分かりやすいしね」
「むぅ、そんな言い方無いんじゃないの?」
「ごめんごめん」
こうして、二人を乗せた飛行機は、終始和んだ雰囲気でネルフへと帰っていった。
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つづく
新!あとがき
新!とかいいつつ、旧7話にはあとがきないので一個だけ。変なのー(ぇ
ぁい、再び遅れてごめんなちゃいw
少々どうしようか迷ってまして。
だって、シンジは過去から来たべ?だったら、何か対策とか考えそうではないですか?でも、どんな対策?
そんな時に思いついたのが…シンジは忘れんぼう!(マテ
完璧やな。これで万事解決よ。ミサトのシンジを思う気持ちもアピール出来るしねb
ちなみに、この後J.Aは勝手に暴走して、勝手に止まります。元々の予定通りにね。
次回、アスカ到来は早く書けるといいなー、と思いつつ、きっとこれまた急かされるまで書かないんだろうな(ぉ
今回も、拍手の言葉&ソレックスさんのお言葉&ゲンさんのお言葉&ついでにEF5に登録の大事件(笑)とかでようやっと重たい指を上げたワケだしww
ていうか実際、そうでもしないとやる気のパロメーターが部活の疲れで下がりっぱなしだしねぇ(苦笑)
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