全てを知る者 第四話

翌日、訓練は午後からの予定だったがシンジとコウイチは朝食を済ませた後、午前中からネルフでトレーニングをしていた。
時間外なので教官はつかず、2人だけでトレーニングルームを使い筋トレを中心にメニューをこなしている。

「うーん。しっかし見事に全部ダメだな。どうしたもんか・・・。」

「うん、・・・ゴメン。」

2人だけでトレーニングといっても事実上シンジのコーチをコウイチがしているようなものだ。試しにトレーニングマシンを使って
やらせてみても見事に標準だった。そのほか、腹筋腕立ては100回もたず、1500m走も7分台である。ちなみに一緒に走った
コウイチのタイムは4分29秒だった。

「俺に謝ったってしょうがねえだろ。まあ、鍛えてなけりゃこんなもんか。じゃあ筋トレなんかやっててもつまらんから実戦やろう!!
午後の訓練があるから疲れない程度にな。」

「そんなにいい加減でいいの?」

「最初は軽くでいいんだよ。自分の能力に見合った訓練じゃないと意味がない。さて、すぐやるか?それとも休憩すっか?」

「うーん・・・・・。やるよ。」

「おっ、そうか。」

「そんなに以外?」

「まあな。絶対自分からやりそうも無かったんだけど・・・・。まあいいや、さあ来い!!」

これから昼食までの2時間、シンジとコウイチの訓練は続いた。2時間の間、シンジはひたすら攻撃し、コウイチのほうは
シンジの攻撃を避け、返しの攻撃を寸止めで入れる。これの繰り返しであった。しかし、ただ漫然と動作を繰り返すのではなく、
コウイチは各箇所で、シンジに攻撃の型、防御の型、タイミングの取り方を説明していった。
シンジはケンカもしたことはないし、元来人を傷つけることは好まない。が、なぜかコウイチとの訓練は楽しいと感じていた。
今やっているのは使徒を倒すための訓練である、とか格闘は人を傷つけるものであるといった今までシンジの頭から
離れなかったことは一切頭に浮かばず、ただただこのコウイチとの訓練が楽しかった。もちろんたかが2時間で人が強くなるわけはない。
シンジが戦闘能力面において成長を見せ始めるのはまだ先の話である。しかし、コウイチの存在は確実にシンジの人格に影響を与えつつあった。

結局2時間フルで動き続けた2人は午後の訓練のことも考え、昼食をとるため訓練を終わりにした。

「ハッ、ハッ、ハッ、・・・・け、結局ずっとやってたね。ハァ、ハァ、でも凄いなあ。あれだけ動いてコウイチは息がまったく乱れないんだね。」

「まあ訓練の賜物だ。ずっとやってりゃいつかシンジもそうなるよ。さあ、メシにしようぜ。」

「うん。」

2人は着替えて食事をとるためトレーニングルームを出て食堂へ向かった。2人がトレーニングルームにいる間、監視カメラが作動していたが、
監視室のモニターに映っていたのは何もせず、2時間ただ談笑する2人の姿だった。











午後の訓練はシンクロテストだった。2人ともシンクロテストははじめてなので、テスト前にリツコからさんざん説明を受けた。
ようするにこの数値が高ければ高いほど自分の思い描いた動きとエヴァの動きに差がなくなる、という説明を受けた。

「初号機シンクロ率48.3%、参号機シンクロ率51.3%です。ハーモニクスは両機とも誤差ありません。」

「シンジ君が7%upでコウイチ君が変わらず。2人とももうちょっと上げて欲しいわね。」

「そうねえ。レイが65%くらいでアスカが80%弱でしょ。2人ともせめて60は超えてもらわないとねえ。
人類を救えるのは今のところあの子たちだけなんだから。」

(人類を救う、じゃなくて使徒を倒せるのが、でしょミサト)

リツコはミサトが裏にもっている本音を考えていた。もっともミサト自身その本音を意識しているのかは分からないが。

「そうね。今の段階で分かっているのはシンクロ率は精神状態に大きく左右されるということ。そのためのメンタルケアは
重要よ。がんばってね保護者さん。」

「わかってるわよ。自分で言い出したことだもの。けど昨日みたいに妙な連中もうろうろしてるみたいだしそっちも気をつけないとね。
まったく諜報部はなにやってんのかしら!」

「結局何も分からなかったみたいね。ガードだけっていうのが不思議だわ。何が目的なのかしら?」

「たぶん警告だと思うんだけど、要求は何なのかしら?チルドレンの存在を知ってるならエヴァの存在意義も知ってるはずだし。」

(あなたが知ってることも全てじゃないんだけどね。)

「そうね。シンジ君、コウイチ君、ご苦労様。つづいてシミュレーションを行うわ。いいわね。」

「「はい。」」

そのまま2機は実験室でこの間のサキエルとの戦闘で得られたデータをもとにしたシュミレーションを行う。
データ上のサキエルにパレットガンを連射する訓練だ。

「では訓練を始めます。エヴァの電源ビル、兵装ビル、回収スポットの位置、全部頭に入ってるかしら?」

「「はい。」」

「それは結構。ではまず初号機の、シンジ君のほうからやってもらうわ。」

「はい。」

「インダクションモードね。目標をセンターに入れてスイッチ。」

シンジの前にはバーチャルのサキエルがいる。画面には2つのポイントが示され、それが重なると照準が合うようだ。

「目標をセンターに入れてスイッチ。」

初号機が持つパレットガンから弾が放たれるが、サキエルの上を通過してしまい当たらない。

「落ち着いて。もう一度。目標をセンターに入れてスイッチ。」

「くそっ!」

シンジは何とか目標に当てようと何度も繰り返していくが、命中率はせいぜい50%というところか。これでは実戦では期待できない。

「シンジ君、もういいわ。あがって頂戴。次回はもうちょっとがんばってね。これじゃあ実戦では不安だわ。」

「はい。すみません。」

シンジはショックを隠せない。分かってはいたが現実を見せつけられたのだ。

「さ、コウイチ君。次はあなたの番よ。」

「はい。」

エヴァからあがったシンジも見守る中コウイチのシミュレーションが開始された。
そのなかで、シンジは心の中でコウイチも自分と同じ程度の成績であることを願っていた。そうなれば、自分は
役立たずの烙印を押されずにすむ。

「目標をセンターに入れてスイッチ。」

コウイチの撃つ弾は全てピンポイントでバーチャルのサキエルのコアに、しかもほぼ同じ1点に命中していた。

「さすがに実戦は強いわねー。これでシンクロ率がもっと高ければ言うこと無いんだけど・・・。」

「そうね。でもそれは今後しだいでしょう。コウイチ君、あがっていいわよ。」

「へーい。あー、やっと終わったぁ!」

この日はこれで訓練は終了し、帰宅が許可されたので2人はすぐに帰路についた。途中、コウイチの提案で
食事をして帰ったため、マンションについてからはこれといってすることは何も無かった。

「あ、・・・あの、コウイチ。」

「ん?何だ、シンジ?」

「あ、あの・・・やっぱり、・・・なんでもない。」

「なんだよ、気持ち悪りぃじゃねえか。言ってみ。」

「・・・あの、射撃、教えてくれない?」

「おう、いいぜ。今日のシミュレーションのこと気にしてんのか。まあしゃあねえって。」

「うん。でも上手くならなきゃエヴァ下ろされちゃうし、・・・うまくなればコウイチのサポート・・・できるようになるかなって。」

「・・・・・・おっしゃ。ちょっと待ってろ。」

そう言うと、コウイチは自分の部屋(元物置)へ入っていき、しばらくするとゲーム機を抱えて出てきた。

「あっ、それ・・・。」

「そう、これ俺の趣味。たぶんこれのせいで射撃が得意なんだろ。」

それはセカンドインパクト後に設立された新進気鋭のゲーム会社が製作したスナイパーゲームで、プレイヤーはスナイパーとなり
いろいろな場所に潜入してそこに出てくる敵を倒していくというものである。このゲームの特徴は、手足と胴にセンサーをつけてやることにより、
プレイヤーの動きがそのままキャラの動きになるというところだ。また、コントローラーが様々なタイプの銃であり、
これを使いこなしてゲームをクリアする。さらにこの銃型コントローラーには撃った衝撃を伝えるという機能がついており、
最高ランクの衝撃では本物の銃と同じ衝撃が伝わるようにも設定できるのだ。もちろん対戦モードもあり、ネットを通じて世界中の愛好者とも
対戦できる。

「へえー、コウイチよくこれ買えたね。知ってたけどゲーム自体ははじめて見たよ。」

「遊ぶことには努力を惜しまないのが俺だからな。ホレ、パレットガンに近い銃を選んで対戦やろうぜ。
衝撃は適当に強いのにしてな。これなら遊びつつ練習になるだろ?」

「うん。でも僕じゃ、コウイチの相手にはならないよ。」

「だーかーらー、最初から出来るやつなんかいないってーの!これはゲームなんだから、遊びだよ遊び!訓練はついでだ!さあ、いくぞ!!」

この日、この2人はミサトが帰ってくるまでずーっとゲームをやっていたようだ。











この日から学校が始まるまで、2人の生活はこの繰り返しだった。午前中はネルフで自主トレ、午後はネルフの指定した訓練、
そして夜は射撃訓練を兼ねたゲームで遊んでいた。と言ってもシンジの疲労がピークに来ていたので夜のゲームは3日で打ち切りとなった。
そして登校を明日に控えた夜、2人は夕食の席でミサトから制服を渡され明日からの説明を受けた。

「それじゃあもう一回言うけど、学校のある日は学校が終わったら訓練だから放課後はネルフに来てね。」

「「はい。」」

「それから、学校での機密保持のことなんだけど、あなたたちがエヴァのパイロットであることはムリに隠さなくていいわ。
ただ、答えていいのはパイロットであることだけよ。ほかの事は一切喋らないでね。」

「分かりました。」

「よろしくね。この1週間訓練よくがんばったわ。学校が始まれば少しは楽になるから安心してねん。学校に行けば友達も出来るし、
カワイイ子もいるかもね〜。なんたってエヴァのパイロットだし2人ともモテちゃうかもよ〜?」

「ミ、ミサトさん!なに言ってるんですか!!」

「まあ〜シンちゃんたら照れちゃってカワイイ〜!」

ミサトはビールの肴にシンジを選んだようだ。これ以上ないほどニヤニヤしてシンジをからかっている。が、横からコウイチが余計な
ツッコミを入れる。

「ミサトさーん。んなことより自分の1人身を心配したほうがいいんじゃないすか〜?」

その後、ミサトにボコられ床でのびているコウイチをよそに沈黙の中で夕食は進んだ。










「ビュウウウーーーーン。ドドドドドドドド、ドァァァーーーーン!!」

ここは朝のHRが始まる前の第一中2−Aの教室。相田ケンスケがビデオカメラ片手にプラモのVTOLで遊んでいる。
と、ケンスケのカメラのフレームに女子の制服が入った。

「なーに、委員長?」

「昨日のプリント、届けてくれた?」

委員長と呼ばれた女子、洞木ヒカリがそこにいた。

「え、いやなんかトウジの家、留守みたいでさ。」

そう言いつつケンスケは机の中のプリントを押し込んでいる。

「相田君、鈴原と仲いいんでしょ?1週間も休んで心配じゃないの?」

「大怪我でもしたのかなぁ?」

「ええっ、例のロボット事件で?テレビじゃ1人もいなかったって・・・。」

「まさか!入間や小松だけじゃなくて、三沢や九州の部隊まで出動してんだよ。絶対、10人や20人じゃ済まないよ。死人だって」

そのとき、ガラガラガラという音とともにジャージを着用した男子、鈴原トウジが教室に入ってくる。

「トウジ・・・。」

「鈴原・・・・。」

トウジはそのまま教室に入って、自分の席に荷物を投げ出し腰を下ろした。

「なんや、ずいぶん減ったみたいやなぁ。」

「疎開だよ、疎開。みんな転校しちゃったよ。街中であれだけハデに戦争されちゃあね。」

「喜んどんのはお前だけやろなぁ。ナマのドンパチ見れるよってに。」

「まあね。トウジはどうしてたの?こんなに休んじゃってさ。この間の騒ぎで巻き添えでもくったの?」

ケンスケが冗談交じりでトウジに聞く。戦争が起きているといっても身近に被害者がいるということは想像し難い。

「妹のやつがな。」

ケンスケはハッとした表情でトウジを見つめる。

「妹のやつが、瓦礫の下敷きになってもうて、命は助かったけど、ずうっと入院しとんのや。家ンとこ、おトンもおジイも研究所勤めやろ?
いま職場を離れるわけにはいかんしなぁ。オレがおらんと、あいつ病院で1人ンなってまうからなぁ。」

「しっかし、あのロボットのパイロットはホンマにヘボやなぁ!!ムチャクチャハラ立つわぁ!!味方が暴れてどないするっちゅうんじゃ!」

「それなんだけど、聞いた?転校生のうわさ。」

ケンスケが待ってましたとばかりにトウジに話しかける。

「転校生?」

「今日、うちのクラスに転校してくるらしいんだよ。それも2人も。戦争が始まったってのにおかしいと思わない?」

トウジはそれきり、押し黙ったままだ。









「えー、それでは転校生を紹介します。」

「大和コウイチです。」

「碇、シンジです。」

「「よろしく(お願いします)。」」

コウイチとシンジは予定通り第一中2−Aに転入した。特に自己紹介等があるわけでもなく、そのまま授業に移行する。
その授業中、コウイチとシンジの端末にメールが届く。

「大和(碇)君があのロボットのパイロットって本当?」

コウイチとシンジは一瞬目を合わせ、周りを見渡すと2,3人の女子が手を振っている。
ミサトに言われたとおり、2人はYESと返事をする。

「「「「「「「「「ええーーーーーーーーーーーっ!!!!」」」」」」」」」

とたんに教室中の生徒が2人の周りに集まる。

「ねえねえ、どうやってパイロットに選ばれたの?」

「操縦席ってどんな感じ?」

「悪いね。守秘義務があるから一切答えられない。」

「ごめんね。言っちゃいけないんだ。」

2人はミサトの命令に従い、それ以上は一切答えない。そんな2人をケンスケは羨ましそうに見つめ、トウジは憎しみを込めて睨んでいた。






昼休みになり騒ぎも落ち着いたころ、トウジが2人に向かってきた。どう見ても友好的な態度ではないが。

「おう、転校生。ちょっとツラぁ貸さんかい。」

「誰だ、お前?」

「ワイは鈴原トウジや。はよ来んかい。」

「・・・・・シンジもか?」

「そうや。」

「シンジ、行くか?」

「うん。」









トウジは2人を校舎裏に連れて行くと、すぐ後ろを歩いていたコウイチに何も言わずに殴りかかった。コウイチはそれを余裕でかわす。

「おっと、何の真似だ?」

「やかましい!!ワイはお前らを殴らなアカン!殴っとかな気がすまんのや!!ええから黙って殴られ!!」

「そういうわけにはいかねえな。なんだってんだよ?」

トウジが続けざまにパンチを繰り出すが、コウイチにはそんなものはどうということはない。トウジのパンチを避けつつ会話をしている。

「悪いね。アイツの妹さん、この間の騒ぎで怪我しちゃってさ。じゃ、そういうコトで。」

トウジにくっついて来たケンスケが理由を話す。

「そうや!!オドレらのせいで妹のやつは怪我しよったンや!!」

「そうか。そりゃあ悪かったな。」

と、コウイチが悪びれもせず言う。

「悪かったで済むかい!!どないしてくれんねや!?妹はお前らのせいで入院するハメになったんやど!!」

シンジは顔を歪めて唇を噛み、トウジから顔を背ける。

「どうする・・・っていわれてもな。どうしようもないな。まあ、運が悪かったと思って諦めてくれ。」

「運が悪かったやと!!えーかげんにせいや!!お前らがもうちょっと上手く操縦しとったら」

「妹は怪我しないですんだのに・・ってか?それはムリだな。俺もシンジもあの日にネルフに呼ばれたんでな。
戦闘に関しては他人に気を使う余裕はない。ましてやそれがシェルターの外にいた人間ならなおさらだ。
特別非常事態宣言が出てたろ?なのになんでシェルターにいなかったんだ?」

「ちょ、ちょっとそれどういうこと?」

今まで蚊帳の外だったシンジが口をはさむ。

「俺たちが戦ってたのは第三新東京市のど真ん中。ジオフロントの真上だ。そんなとこにシェルターがあるわけねえだろ?
それにシェルター自体の被害報告は無かったしな。だったら他のどこかで怪我したと考えるべきだろ?違うか、お前。」

「ぐっ、やかましい!!とにかくお前らが悪いンやああ!!!」

トウジは再び拳を振り上げコウイチに殴りかかったが、コウイチは軽くそれをかわし、トウジのボディに拳を一発叩き込んだ。
トウジは悶絶してその場に倒れる。コウイチは倒れたトウジに近づき、声をかける。

「確かに俺のせいで怪我したのは事実だし、悪いとも思ってる。だけど怪我人をいちいち気にして見舞ってたらキリが無いから、
別に見舞いに行く気もない。俺を恨むのはお前の自由だが、俺の行動の邪魔はするな。死にたくなけりゃな。」

コウイチはトウジにそう吐き捨てると、今度は立ちすくんでるケンスケに向かって声をかける。

「おい、お前。お前も俺たちに言いたいことでもあんのか?」

「い、いや・・・。俺は違うけど・・・。」

「じゃあ、コイツ頼むな。五分もすりゃ動けるようになるから。じゃあな。」

そう言うと、コウイチはシンジを連れてその場を去っていく。残されたケンスケはいまだ起き上がれないトウジに呟く。

「トウジ、ありゃお前には勝てねえよ。八つ当たりは止めとけ。」

「・・・・・・・・・・。」








シンジはコウイチの行動を不審に思っていた。自分がエヴァのことで悩んでいたときはあれだけ真剣に考えてくれたのに、
トウジの妹のことに関してはまるで興味がないような態度を見せている。シンジにはコウイチの考えは分からなかった。

「ねぇ、コウイチ。どうしてもっときちんと謝らなかったの?あの人の妹さん、僕らのせいで怪我しちゃったんだよ。」

「謝ったって怪我が治るわけじゃねえだろ?」

「そうだけど・・・でも、やっぱり謝らないと!!」

「謝ったってあいつの気は晴れないよ。それに俺たちはやるべきことはやったんだ。だけどあいつが怒るのも当たり前だ。家族が怪我した
んだからな。だから別にどっちが悪いとかじゃない。単に運が悪かっただけだ。そんなんで謝ってもあいつの気は晴れないし、俺たちだって
納得いかないだろ。どうしようもないんだから。だからもうこれは丸くは収まらないよ。あいつの怒りは俺を恨むことで少しでも晴らして
もらうしかない。エヴァのパイロットなんかやって、戦争の最前線にいたら誰にも恨まれないってのはムリだ。」

「・・・・・・・・・・・・・・。」

「シンジ、どうかしたか?」

「・・・なんでもない。」

「そうか。じゃあ戻ってメシにしようぜ。」

「うん。」

コウイチとシンジは教室へと戻っていった。その間シンジは自分がいかに短慮であったかを感じていた。トウジに文句をつけられたとき
シンジは無意識的にだが、トウジに恨まれないようにと考えていた。だが、それは全てが自分のためでありトウジのことは全く考えすに
自分のせいで人が怪我をした事実から逃げようとしていた。だが、コウイチはトウジの気持ちも考え、トウジの怒りや憎しみを受け止めている。
シンジがコウイチを見る目は徐々に尊敬の色を濃くしていった。








それから約2週間、シンジとコウイチは家→学校→ネルフという生活を繰り返していた。学校ではしつこく噛み付いてくるかと思われた
トウジだが、コウイチの腕っぷしにビビったのか意外と絡んでこなかった。ケンスケも同様で、2人の悪いうわさをばら撒くということもないようだ。
そして今日は学校が休みなのでシンジとコウイチは朝からネルフに来ていた。今日は2週間ぶりのシンクロテストの日である。

「それではシンジ君、コウイチ君、シンクロテスト始めるわよ。」

「「はい。」」

「マヤ、どう?」

「はい。初号機シンクロ率56.8%、参号機シンクロ率51.3%です。ハーモニクスはともに正常範囲内です。」

「シンジ君のシンクロ率は順調に伸びてるわね。とうとうコウイチ君を抜いたわ。これでこのまま伸びて行ってくれればいいんだけど。
それに引き換えコウイチ君は微動だにしないわね。彼のシンクロ率が上がればものすごい戦力なんだけど。」

「そうねえ・・・。コウイチ君、聞こえてる?もうちょっと集中してくれない?」

「やってますよ!」

「そうね。2人とも、今日はあがっていいわ。お疲れ様。」

「「はい。」」

「リツコ、シンクロ率を上げる秘訣みたいなもんないの?」

「あったら科学はいらないわ。こればっかりはどうしようもないわよ。本人の精神状態に左右されるし。
そういう意味ではブレがなくていいんじゃない?」

「そうだけど、如何せん数値が低いわ。作戦課長としてはもっと高い数値が欲しいのよ。」

「それは保護者としてのあなたの仕事でしょ。」

「・・・そうね。」

簡潔にこたえたミサト顔には暗く淀んだ表情が影を落としていた。








「シンジ、今日はこれからヒマだしちょっとつきあわねえか?」

「いいけど、どこいくの?」

「あの綾波レイっていう子の病室だよ。見舞いに行かねえか?あの時は大怪我してたけど、そろそろいいだろ。」

「そうだね。同じパイロットだもんね。行こうか。」

「よっしゃ、じゃあ今からいこうぜ。」

コウイチとシンジはそのまま付属病院の病棟に向かう。受付で病室を聞き、そのまま病室に向かう。
コウイチは病室の前に立つと、ドアをノックして中に声をかけた。

「入ってもいいかい?」

「問題ないわ。」

「「失礼しまーす。」」

2人が部屋に入ると、ベッドには確かにあの時ストレッチャーでケージに運ばれてきた女の子がいた。まだ怪我は治っていないらしく
右手を包帯で吊り、右目にも包帯を巻いていて、その姿はとても痛々しい。

「こんにちは。怪我、少しは良くなった?」

「問題ないわ。あのときケージにいたけど、貴方たちは誰?」

「ああ、知らないのか。俺は大和コウイチ、君と同じエヴァのパイロット、4th Childrenだ。よろしく。そんでこっちが碇シンジ。こいつは
3rd Childrenだ。」

「よろしく、綾波さん。」

「碇・・・司令?」

「うん。僕は碇司令の息子なんだ。」

「そう。」

「・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・。」

会話はとぎれ、病室を沈黙が支配する。レイはシンジの瞳を驚いたように見つめたままだ。

「まあ、とにかく怪我が治ったら」

ウーーーーー、ウーーーーー、ウーーーーー

「おっと、おいでなすったな。」

「コウイチ、これって」

「こんなもんが鳴る理由なんか1つしかねえだろ。じゃあ綾波さんはゆっくりしてて。俺らでカタをつけるから。シンジ、いくぞ!」

「うん!」

2人が飛び出していった病室で、1人残されたレイの頭からはシンジの瞳がいつまでも離れなかった。

「碇・・・くん?」














あとがき

第二話で助かった女の子が当時の妹だと思った人!?(いないか・・・。)トウジの妹は結局助かってません。あの女の子は
サキエル戦でのシンジの出撃に意味を持たせるだけのために登場してもらいました。出番もこれだけです。名無しの女の子ごめんなさい。
次回はシャムシエルとの戦闘です。すんなりいくでしょうか!?お楽しみに!





コメント

やはり、トウジは激昂ですね。
まぁ、家族が戦闘で大怪我したんだから、誰かに怒らないと気は持ちませんし、仕方が無いんでしょうね。
それを受け止めるコウイチも偉い偉い。

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