ミサト家のリビングにて、シンジは肩肘をつきテーブルの椅子に腰掛けていた。
ちなみに、まだお昼前である。
今日はちょっと熱気味で学校を休んだシンジと、たまたま早退したミサトが二人で家にいるという、アスカが来てから初めてのことだった。
「シンちゃぁん。どしたのぉ?浮かない顔してぇ〜〜」
ビール片手に、完全に酔っているミサトを目の前にシンジはさっきからボーっとしていた。
シンジは返事の代わりに
「はぁ・・・」
というため息をついた。
「何よぉ・・・ため息なんてついちゃってさぁ♪」
シンジの真似をして(アルコール分20%の)ため息をついてニッコリと笑いかけてくる。
「いえ・・・。なんでもないです。」
そう言うと、また大きなため息をつき天井を見上げてボーっとし始めた。
「なによ〜。つまんないシンちゃん。・・・なんか嫌なことでもあったの?ねぇ〜」
「いや・・・別に何もありませんけど・・・」
「嫌なことでもあったんならぁ、ビールでも飲みなさいよぉ〜。」
「未成年にアルコール飲料、飲ませちゃ駄目ですよ、ミサトさん。僕はまだ15歳なんですから・・・」
「まったくぅ〜。それしか言わないんだからぁ・・・。とりあえずシンちゃんの分ここにおいて置くからねぇ〜。」
ミサトは(飲みかけの)ビールをシンジの前に置くと、テーブルの端に山積みにしてあるビールの山から新しい缶を一本取り出すとふたを開けた。
・・・ふぅ・・・どうせくれるんだったら、そっちの新しい缶のほうを・・・ま、いっか・・・。・・・よし、飲もう。
シンジは、飲みかけの(といっても、まだ一口しか飲んでいない)ビールに手を伸ばした。
「わおっ♪シンちゃんも、この大人の味を味わう日が遂に来たのね♪」
ミサトが見ている目の前で、ゴクッ、ゴクッ、ゴクゥ、とシンジの喉が動いている。
そして全てを飲み終えるか飲み終わらないかの内に、ポーンとミサトが何かを思いついたのか左の手のひらを右手の握り拳で叩いた。
「もしかしてぇ〜〜〜・・・・・・・・・・・・・シンちゃん・・・・・・・・・・恋の悩みぃ?」
ブフゥーーーーーーーーーーー!!!
シンジの口から、一気にビールが吹き出た。
「図星ぃっ!?やっぱりぃ!?御っ年っ頃ぉ〜〜♪」
ミサトの目がランランだ。
ミサトは、テーブルを拭きながら鼻歌を歌いだした。
「や、やめてくださいよ、ミサトさん・・・って、あれ?あんだか・・・頭がぁ・・・フラフラするかも・・・しれませんね・・・」
「そりゃそうよぉ〜♪あんだけの量、一気飲みしたんだもん。しかも、いっちばんアルコール強いやつだったしねぇん♪」
「・・・はらぁ〜・・・・・・・・ほひぃ〜・・・・・・・ふえぇ〜・・・・・・・・・ミサトさんっ!!もういっちょっ!!!!」
シンジは、勝手にビールの山から缶を一本取り出した。
「あらぁ?シンちゃんったらぁ、なかなかいける口ねぇ〜〜〜〜。」
「いやっふぉーーーーーーーーー!!」
数時間後・・・
「それで・・・シンちゃんの好きな人って・・・だ〜れ?」
「いやだなぁ〜!ミサトさんってば・・・。あはははは」
そう言いながら、ミサトの手を握る。
真面目な顔をしてミサトの目を見つめる・・・。
年甲斐もなく、シンジに見とれてしまったミサト。
「ミサトさん・・・貴方ですよ・・・」
「え・・・?」
今ので、一気にミサトの酔いが覚めた。
「ほ、本当?」
「本当ですよっ!!」
「シンちゃん・・・私も・・・」
ミサトの目がマジだ。
「ミサトさん・・・目を瞑ってください・・・。前から、その唇に熱い口づけを交わしたいと思っていました・・・」
ミサトが泣きながら、目を瞑る・・・
しかし、シンジは笑い始める。
しかも、その後続けた言葉がそんなミサトを落胆させる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・な〜んちゃってっ!!ミサトさん、マジになちゃってるしさぁ〜♪」
・・・シンジ・・・変わりすぎだって・・・。
ほら見ろ。ミサトさん、あんなに沈み込んじゃったじゃないか。
あ〜あ。ミサトさん一気飲みは体に悪いです。(作者の声)
ミサトがゴクゴクと一気飲みをして、3秒で酔いを取り戻すと(もはや神業)服の袖で涙を拭き、今度は体を乗り出してシンジに向かって訊ねた。
「じょ、冗談よしてよ〜。や〜ねぇ〜・・・で、シンちゃんの本当の好きな人って誰ぇ〜?」
ミサトは、ずっとニヤニヤしている。
「ええ〜。言わなきゃいけないんですかぁ〜〜?」
シンジの顔に少しだけ雲がかかった。
「そうねぇ〜。言わなくてもいいけど・・・。良しっ!こうしましょっ!言わなかったら、シンちゃん、私とキス〜〜!!」
ミサトはやはりさっきの事を根に持っているのか?
それはともかくそれは、シンジにダメージを与えたようだ。
しかし、ミサトのそれも裏目に出て何時間粘っても言わなかったシンジが口を開いた。
「・・・アスカ・・・ですぅょ。」
ミサトの頭の中には今ので二つのことが浮かんだ。
・・・私とキスするのがそんなにいやなの?シンちゃん・・・
・・・やっぱり、私じゃ不釣合いかぁ・・・。いいわ、あたしが貴方のお姉さんとして一生懸命応援してあげるわっ!
んで、口から出た言葉はコレ。
「それで、告白する気はあるの?」
「・・・明日・・・。」
シンジが照れながら呟いた。
ミサトはシンジの隣に座ると、肩を組んで耳元でこっそりと言った。
「へぇ・・・。それでどういう計画な訳ぇ?」
「手紙を渡してから、学校で屋上に呼び出して・・・その・・・告白を・・・・・・・って何で僕が言わなきゃいけないの?」
シンジが催眠術(?)から覚めた頃にはミサトはニッタニタでシンジの見ていた。
「そ〜いうことなら私に任せなさいっ!」
そう言うと、携帯電話をさっと取り出し電話をかけ始めた。
「リっちゃん〜。私よ、私ぃ〜。」
少し、声が漏れてくるので話の内容が大体分かる。
「分かるってるわよ。また酔ってるわね。こっちまで酒臭くなっちゃうわよ・・・。それで何の用?」
「この前頼んでたアレできたぁ〜〜〜?」
すると、リツコの声が妙に明るくなりだした。
「とっくに出来てるし、もう使えるわよ。何なら、今から使う?」
「そうなのっ?早く言ってよね〜。うん、今日早速使うわよ。じゃぁね〜〜」
ピッ
その怪しい電話内容を聞いて、シンジは
・・・・・余計な事言うんじゃなかった・・・
と、後悔していた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すると、アスカが学校から帰ってきた。
ピンポーン
バター――ン
「ただいまぁ〜〜〜♪・・・って、アルコール臭っ!!ちょっと、ミサトっ!!!いい加減にしなさいよっ!!今日は半端ないわよ、この臭いっ!!」
ドタバタと凄まじい勢いでリビングに入ってきたアスカは、ビール片手に顔が真っ赤なシンジを見て怒り出した。
「バカシンジ〜?何やってるのかしら〜〜〜〜〜!!」
不気味に静かなのが、恐怖感たっぷりである。
アスカの顔がニッコリと笑ってる。
「アスカぁ〜。おっ帰り〜。」
両肘をつきビールの缶をひらひらとさせ、恐怖で引きつりそうになる顔に精一杯の笑みを浮かべる。
「まさか、風邪引いて休んでると思いきや、ミサトとビール飲んで酔っ払ってるとはね〜〜〜。」
そう言いながらシンジの頭に鞄がクリーンヒットする。
「帰ってくるまでに何とかしなさいよっ!!!!!!!!あたし、ヒカリの家に行って来るからっ!」
と言うと、服も着替えずにそのまま外に出て行ってしまった。
シンジはどうやら酒に弱いようだ。
さっきの事をまだブツブツと言っている。
ミサトの運転(もちろん飲酒運転)で、生死の間を彷徨いながらやっとたどり着いたネルフの入り口にはリツコが立っていた。
「おまたせぇ〜〜。リっちゃん。」
ふらつく足どりをシンジに支えてもらいながら、ミサトが手を振る。
リツコが小さなため息をつきながら、
「あんた、首にされるわよ。酒飲んでネルフに来るなんて・・・。」
と言いつつ、額に手を当てた。
「細かいことは気にしなぁ〜い・・・っと。それよりも、あれは?」
言いながら、リツコもミサトもニヤニヤしながらシンジの方向を向いている。
そのうえ、リツコは横目でニヤニヤしながらシンジの方向を見ていたので奇妙な事この上ない。
酔いもそろそろ覚めてきたので逃げなければ後が悲惨なことを察したシンジだったが、体が言うことを聞かない。
シンジが逃げないように、リツコとミサトが手を引っ張っていく。
泣く泣くシンジは拉致されていった・・・。
連れてこられた所は、リツコの研究所内だった。
一体全体どうやったのか・・・
物が押しのけられて大きなスペースを無理やり作ってあり、そこには目の前には今まで見たことの無いような機械が置いてあった。
卵を横に倒したような鉄の殻の中に白いベットが置いてあり、その枕のあるべき場所には恐るべき色とりどりのコードが散らばっていた。
・・・まさか、僕がコレに寝るんじゃないよね?
まだ、リツコもミサトもニヤニヤしている。
「これって・・・何ですか?・・・永眠装置?」
シンジは恐る恐る聞いてみたが、リツコが声をあげて笑い出した。
「あはは・・・。シンジ君。コレは貴方のために作ったのよ。」
そう言いながらリツコは、白と青のカプセルに入った薬をコップ一杯の水とともに差し出した。
すると、どこからか持ってきたビールとパイプ椅子を持ってきたミサトが勝手に一人で説明し始めた。
「だからねぇ・・・。私がこの日のためにリツコにお願いしてたのよ。その装置の名前は無いけど、要するに『イメージトレーニング』をよりリアルにする機械よ。」
「貴方がこの薬を飲んでそのベットに寝ていれば特殊脳波がコードから流れて、それを直接電波化させて脳に送り込むことで実際に話したり聞いたりするのと同じ効果を出すのよ。アスカはエヴァのパイロットとしてMAGIに性格とかをプログラム化して組み込んでるから電線繋いでやればアスカとそっくりの行動するはずよ。実際にやってみればよく分かるわよ。」
シンジは薬を受け取ると水と一緒に喉の奥に流し込んだ。
すると、突然眠気に襲われた。
ミサトが部屋の電気を消し、スクリーンがするすると天井から下りてきた。
「さぁ、ショーの始まり・・・じゃなかった、イメージトレーニングの始まりよ。」
「ベットに横になりなさい、シンジ君。」
シンジの脳裏に最後に焼きついたのは初めて見るリツコの超ニヤケ顔だった・・・・・・・・・・・・・・。
「あ・・・れ・・・?こ、ここは?」
気が付けば、シンジは学校の屋上にいた。
フェンスに寄りかかって、夏風を感じていた。
呼吸をすれば、新しい空気が入ってくる感覚が分かるし外の空気は肌寒さを感じていた。
・・・そうか、今がイメージトレーニング中なんだな・・・こういう事か・・・
ギィーーー―
鉄の扉が開いた。
と、そこには髪の赤い少女が突っ立っていた。
少々お怒り気味のご様子である。
そりゃそうか・・・。
考えてた手紙の内容が〔来い・・・屋上で待っている。来たくなければ来なくてもいいが大切な話だ byシンジ〕って、冗談交じりで父さん風に考えてたからね・・・怒るのも無理は無いか・・・
一メートルほど近くにずんずんと歩いてきながら、荒々しく言う。
『ほら、来てやったわよ、このアスカ様がっ!!んで、偉そうなバカシンジっ。何の用なのよっ!?』
腕を腰に当ててシンジの目の前で立ち止まった。
『あたしも忙しいんだから、早く用事を言いなさいよ』
「ええっと・・・アスカ?」
・・・練習だとわかってても緊張するなぁ・・・
アスカがふんぞり返って怒鳴る。
『ほんとにはっきりしないやつねぇ・・・いつまでたっても・・・。早く言いなさいよ。』
「・・・笑わない?」
『時と場合によるわね・・・』
「怒らない・・・?」
『それも同じ。場合による』
フンッ、と鼻を鳴らす。
「・・・・・・・・・・・・・機嫌悪くならない?」
『もう機嫌なんてとっくに悪くなってるわよっ!!』
アスカはかんかんに怒っている。
きっと、今から告白されるなんて微塵にも思っていないのだろう。
・・・どうせ、またくだらないことね。とか思っているんでしょ・・・アスカのことだし。
・・・まぁ練習なんだから・・・よし。言ってみるか。
でも・・・やっぱり緊張はするなぁ・・・
「・・・僕のこと愛してくれる?」
シンジがさらっと言ったので、そのノリでそのまま続けようとしたアスカがピタッと静かになる。
『だから、何回言わせるつもりっ!?場合によ・・・って?・・・もう一回ゆっくり言ってくれる?』
アスカもシンジも、恥ずかしさでお互いの目も見れずに俯いてしまう。
「あ、愛してくれる?僕のこと・・・。っていうか、愛してます。付き合ってくださいっ。」
アスカがニッコリと笑って顔を上げる。
頭の上に豆電球でもあるかのようだ。
『・・・ふ〜ん。あっそ・・・。誰の差し金?』
・・・何ですと?
シンジは、顔を上げ慌てて訂正しようとしたがアスカがシンジの口に指を立てそれを阻止した。
「違うよっ!僕は本当に君の事・・・」
『バレバレなのよっ。誰に「言え」って言われたの?ミサト?それともあのアホ二人組み?・・・レイはありえないわね・・・』
・・・信じてもらえない?・・・名前はシンジなのに・・・。本当に泣きたくなっちゃうよ。
「じゃぁ、どうやったら証明できるんだよっ!アスカに、どうやったらこの気持ち伝えられるんだよっ!!」
・・・つい怒鳴ってしまった。
アスカが驚いた顔をしてビクッっと肩を震わす。
そして、負けるかぁ、と大声を返す。
『な、何大声出してるのよっ!耳が痛いじゃないっ!・・・冗談もいい加減にしないと可愛くないわよ・・・。』
「だ・か・らっ!僕は君のことが、大好きなんだよっ!愛してるんだよっ!」
・・・こうなりゃ、やけだっ!何とでもなれっ!
『じゃぁ、どれぐらい愛してるのっ!?』
もうすでに、怒鳴りあいだ・・・。
というよりも痴話げんかとも言うが・・・
「世界で一番愛してるよっ!!君の青い目、君の体、君の繊細なハートも、全部、全部大好きだよっ!」
まったく・・・。大声での喧嘩が、二人は気づいてないほど熱い言葉ばかりだ。
おかげでギャラリーが回りに集まって来たし、中にはいすを持ってきてニヤニヤしている者までもいる。
彼らはアスカをさらにヒートアップさせたようだ。
『何よっ!!バカシンジのくせにっ!!あたしなんかよりも、ファーストのことが好きなんでしょっ!』
この言葉に少したじろぐシンジ。
「あ、綾波は・・・す、好きだけどっ!でもアスカのほうがっ!」
しかしアスカは、自分に不利なことは耳から入らないようだ。
『ほ〜らね。やっぱりあたしなんかよりもファーストのこと好きなんだっ!!あたしは、二股男なんか大っ嫌いなのよっ!!』
アスカは顔を真っ赤にして、帰ろうとした。
今まで息一つ聞こえさせずにし〜んとしていた周囲を取り囲む人だかりから、あ〜あ、と言う声やため息が聞こえてきた。
シンジは心の中で呟く。
逃げちゃだめだ・・・逃げちゃだめだ・・・逃げちゃだめだっ!
「最後まで聞いてよっ!アスカっ!僕は君が愛するんだっ!そう決めてるんだっ!!!綾波なんかよりもずっとずっと好きだよっ!!」
『まだ言うの・・・?あんたってホントバカシンジよねぇ・・・。』
ドアに向かって歩いていたアスカがクルッとこちらを振り返って冷たい一言を言い放つ。
・・・本当に信じる気無いんだね・・・アスカ・・・
「どうやったら僕のこと信じてくれるの・・・アスカ?」
声のトーンを先程よりも落とし、下手にでてみることにした。
『何やったって、信じないわよっ!!』
・・・全然意味無いみたいだ・・・
こうなりゃ、実力行使だっ!!!!
シンジは決意した。
「・・・アスカがいけないんだからね・・・。僕のこと信じてくれなかった・・・」
呟くように言った。
『なんのこっちゃ・・・さっぱりわかんないわよ。』
アスカがツーンとそっぽを向いた瞬間、シンジがフェンスから離れアスカに駆けより抱きしめた。
観客達から、おおぉーーーと歓声の声があがる。
『えっ・・・・・・・・・・・・・・・・・?ちょ、ちょっと離してよっ!!このスケベっ!変態っ!エロ・・・』
「アスカっ!・・・」
『五月蝿いわねっ!早く離してよっ!!もう絶交してやるんだからっ!!』
「・・・アスカ」
アスカが逃げようとしていたが、しかし、シンジの行動の方が早かった。
アスカの顎をこちらに向け・・・。(群衆がはっと息を飲む)
即座にキスをした。
何の味もしないそのキスも、今までからすれば大きな前進だった。
ボボンッ!!!!!!
という音とともに、アスカは髪よりも深い赤ら顔になった。そして、当然のように観衆から、物凄い叫び声があがる。
大体は、「私のシンジ君だったのにぃ・・・」とか「惣流さ〜ん。そんな男、殺しちまえっ!」とかいう野次と感嘆の声だった。
アスカはただぼーぜんとしているように見える。
・・・僕は、何してるんだろう・・・
シンジは自分のしたことに後悔し、アスカを解放すると一人ドアの方へと向かった。
と、その時。
トン・・・
シンジの背中に、温かなぬくもりと重さがかかった。
『バカ・・・シンジ・・・』
それはアスカだった。
・・・あれ?・・・
シンジがアレだけの行為をしてしまったのに全く怒ってない、いやそんなレベルではない。今まで聞いたことも無いような甘い声を出しているのだ。
シンジは振り返ると、アスカが泣いていた。
それも顔も隠さずにわんわん泣きじゃくってヒックヒックと嗚咽が止まらない様子。
そして、アスカは何かを言おうとしているようだった。
『ズズッ・・あたし・・ヒック・・シンジ・・ズズズッ・・・好き・・・ウウウッ・・・だったのに』
シンジは、周りの連中に向かって、
「今、ここから3秒以内に出て行かないとネルフ総動員して邪魔者は皆排除するぞ!!さぁ、とっとと出て行ってくれっ!」
と大声を出した。
階段の方に皆が流れ込んで、最後の一人だったトウジとケンスケが「頑張れ〜」とでも言うようにガッツポーズをして静かにドアを閉めた。
シンジはドアが閉まるのを確認すると、アスカを自分の膝の上に寝かせた。
「ほら落ち着いて、アスカ・・・。僕が悪かったから・・・。本当に僕がいけないんだ・・・。僕なんかじゃ気味とつりあわない事ぐらい知ってたんだ・・・」
しかしその言葉を聞くと、アスカが首を振りながらシンジをきっと睨み一発張り手を放つ。
叩かれた頬を抑えながらアスカが落ち着いてきた頃。
アスカがシンジの太ももに頭を置いて、シンジの顔を見上げる。『シンジ・・・。あたしね・・・本当はシンジの事好きだったんだよ。』
シンジは、素直に頷くだけである。
『でもシンジが告白してくれた時、あたし、あんまり唐突すぎて、何ていうか、自分の想像と、ギャップがありすぎて、何だか抵抗しちゃって・・・』
「それで、アスカ。・・・さっきの答えが聞きたいんだけど。」
『もちろんいいに決まってるじゃない。』
アスカが、ニッコリと笑う。
・・・前に僕の笑顔が凄い可愛いとか言ってたけど、絶対アスカの笑い顔の方が数倍・・・いや数百万倍も可愛いよ。
シンジはニッコリと笑うアスカを愛しそうに見ながら、ポロっと
「アスカって、本当に可愛いね・・・」
つい、言ってしまった。
するとアスカがシンジを抱きしめながら
『嬉しい。・・・もっと言って・・・。もっと抱いて・・・』
と、なついた猫のように甘い声を出す。
シンジは力と熱を込めアスカをより一層強く抱きしめる。
「うん。アスカって本当に可愛いよ。すっごい可愛い。世界で一番可愛い。綾波よりも・・・可愛い。愛してるよ。口では伝えられないけど、本当に本当に・・・」
そこまで言ったら、アスカがまた人差し指を唇の前に立てて、
『ううん。シンジだって・・・。頼りないけど、優しくて、あたしの事想っててくれて、とっても心が澄んでいて・・・世界で唯一のあたしの彼氏にできる男よね。』
と微笑みながら言う。
シンジが、アスカのさらさらな髪を右手でゆっくりと撫でると、本当にいい匂いがした。
「ふふふ。アスカの匂いって・・・いい匂いだね。」
アスカの顔が、限界まで赤く染まっている。
しばらくするとシンジの膝枕を名残惜しそうに離れるとちょこんと正座をした。
『不束者ですが・・・どうぞよろしくお願いします・・・』
と深深と頭を下げた。
シンジは動揺して、慌てて頭を下げる。
そうしたら、妙な空気になって・・・笑っちゃった。
今までで、一番笑った。
それで笑い疲れた頃に、アスカが僕に飛びついてきてキスしようとしてる・・・。
ああっ、唇が今・・・・・
「ヒヒヒヒ・・・」
・・・何だこの笑い声?
それよりもアスカは?
「アスカァっ!!」
横になってるシンジは思い切り起き上がった。
と、ゴツンッ、と頭をぶつけた。
それと同時に周りから大爆笑が巻き起こる。
ここは、あの機械の中だった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!」
シンジは目の前の光景に絶句した。
理由は簡単。
先ほどまでいた観客が、増えているのだ・・・。
最初はリツコとミサトしかいなかったはずなのに今は、トウジ、ケンスケ、ヒカリ、加持、マヤ、レイ、冬月・・・そして・・・
「と、父さんっ!」
シンジが目を覚ましてからまともに言った最初の一言はそれだった。
「ふ・・・問題ない。自由にやりたまえ。・・・このような余興も一時は必要だ・・・。」
そう言いながら、冬月と一緒に研究所を出て行ってしまった。
しかし、シンジは見逃さなかった。
ゲンドウの目元には笑い涙の跡があった。
そして、ドアから出ようと立ち上がる際、いつものポーズを解いて振り返ると言うほんの一瞬だけ口元が見えたときは物凄くにんまりとしていた。
しかも、部屋から出て行くとき肩が揺れていて立っているのもやっとのようだ。
ゲンドウが研究室を出た後に、ドアの向こうから大きな咳払いが3回聞こえてきた。
シンジは呆気にとられて、目をぱちくりさせた。
「・・・なんでこんなに来てるの?・・・ちょっとミサトさん。」
ミサトは聞いてもいない。
ミサトも、加持にしがみ付いていないと立つことも出来ないぐらいだった。
当の加持も、大笑いをしていて結局支えが無くなってしまい、ふにゃふにゃと地面に座り込んで笑い出した。
リツコといえば、片手でデスクに手をつきあいた方の手で腹を抑えながら必死に笑いに堪えている。
トウジとヒカリとケンスケは・・・もう駄目だ。笑いすぎで痙攣を起こし泡を吹きながら地面に転がっている・・・。
マヤは腹を抑え、リツコの足元に痙攣しながら這いつくばり、喘ぎ喘ぎ咳をしている。
ただ一人だけ、無表情なレイは(シンジには当惑と怒りと悔しさが入り混じった物凄い顔をしているようにも見えたが)、ただぼーぜんとして突っ立ている。
シンジにとって、本当に悪夢のようだ。
頭に付いているチューブを強引に外し、真っ赤な顔をして機械の外に出てみると拍手で出迎えられた。
気持ちのいいものではない。
アレだけの台詞や行動を見られ、馬鹿にされ、兎に角シンジの胸の中は恥ずかしさで満ち溢れていた。
一人だけ異空間に飛ばされたような気分になった。
頭の中が真っ白だ。
目を閉じ、現実から逃げたくなった。
もっと、よく考えてから「告白」するんだった・・・
しかし、もう後の祭り。
既に、手遅れだ。
・・・トウジ達もいるから・・・学校の方は駄目だ・・・明日には噂でいっぱいになるよ・・・
・・・ネルフ内も・・・きっと駄目だな・・・・・・逃げちゃ駄目だ?・・・本当に逃げたいよ・・・
こんな現実・・・
目を開ける。
ミサトが、パイプ椅子の上に立って、加持相手に
「アスカって、本当に可愛いね・・・」
と繰り返すと、一瞬静かになった研究室に爆笑の嵐がまた吹き荒れた。
・・・もう嫌だ。
流れる涙さえも、シンジの心をどんどん闇へと引きずり込むだけだった。
帰り際にも、シンジはふてくされたままだった。
ミサトが何度も謝りながら運転していたが、シンジはムスッとしていて全ての返事が返らなかった。
ちょうど、日が暮れ始めていてシンジの気持ちも何となくやんわりとされたような気がした。
アルコールの匂いたっぷりの家に入ったとたんミサトがあることを思い出した。
「あっ!匂いとか消すの忘れてた・・・。アスカが五月蝿いわねぇ・・・。匂い消しってもう無かったね・・・。買ってこよ・・・。」
そう言うと今脱いだばかりの靴を履きなおして、シンジに先ほど録画したビデオを手渡しさっさと買い物に出かけてしまった。
・・・まったく・・・ミサトさんって本当にだらしないなぁ・・・
とか思いつつ、特にやることも無いのでビデオをつけてみることにした。
『・・・僕はアスカの事・・・』
・・・我ながら照れるものだよ・・・
と、苦笑しながらテレビを見ているうちに突然、ふすまが開いた。
シンジはくるりと振り返る。
髪がぼさぼさなのを見て、昼寝をしていたというが分かる。
それは、アスカ。
目をこすって俯いてる。
顔を上げるまであと0、65秒・・・リモコンまで少し距離がありすぎる・・・
テレビから声が聞こえてきた。
『・・・愛しているんだよっ!・・・』
その直後、シンジの背中にアスカの跳び膝蹴りが炸裂してシンジが夢を見始めた。
夢の内容は、誰もが知っている川とお花畑・・・
目が覚めてしまった。
起きていたがまだ夢を見ていた。
字は少し違って『悪夢』というものだが・・・・・・・・・・・。
シンジが気付けば縄でガッチリ固定されてるのが分かった。
しかも、手抜かりは無く逃げることなどは出来ない。
横を見てみれば、同罪と思われしミサトも縛り付けられている。
そして恐ろしいことに目の前には先ほどのビデオをジーーーッ、と見ているアスカがいた。
誠にシンジ君には申し訳ないが、守るべき保護者は冗談抜きで白目を向いて気絶していた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さてと・・・舌でも噛むかな?
シンジも気絶したくなった。
今現在、シンジの恐怖の象徴であるアスカの背には何かしらの殺気が漂っていた。
アスカが立ち上がった。
ビデオが終わったのだ。
振り返る彼女の顔には不思議な笑みが・・・。
「あ、アススススス・・・カ?」
声が震えている。
・・・内心、トイレに言って置けばよかったと思うよ・・・
そうすれば、ちびることなんて絶対にない・・・訳でもないか・・・
体が小刻み、否、大刻みに震えていた。
アスカが、お手製の鞭を構え何故かおしとやかにこちらに向かって歩いてくる。
床に転がっているシンジの目の前に正座した。
物凄い笑顔でシンジを圧倒する。
冷や汗が滝のように流れる。
ニッコリと微笑みかけられても・・・本当に・・・ちょっと・・・
〔シンジ、活動停止まで約50秒前。〕
アスカが口を開く。
「どうしたの、シンジ君?・・・無理もないですわね。あのようなビデオを私に見られた後ですものね・・・。」
・・・なんなんだぁーーー。このアスカのお嬢様喋りはーーーーっ!恐怖をあおるなぁーーーーっ!!
鞭を左右に引っ張り、ピシャンッ、と鳴らす。
・・・しまった。ちびった・・
〔シンジ、活動停止まで約40秒前。〕
「どうやってあのようなビデオを御作りになったかは存じませんが、貴方のお父さんに私流にお尋ねした所、全て話してくれましたわ・・・。」
・・・恐喝かな?・・・いや、絶対恐喝だ・・・
「スゥゥゥー――――」
・・・なに?深呼吸?
「ふざけんじゃないわよっ!!!!!!!!」
・・・鼓膜破れた・・・。
〔シンジ、活動停止まで約30秒前〕
アスカは鞭を振り上げた。
やられる・・・
そう思ってシンジは目をつぶったが一向にたたかれる気配はない。
恐る恐る目を開けてみると、ため息をつきながら鞭を後ろの方に放り投げて足を崩すアスカがいた。
「あのさぁ・・・。何で、あんなくだらないもん作ったわけ?」
シンジ、無言。
「もっと直接的に言えばよかったのに・・・。あんなに、怒ったりしないわよ・・・。むしろ、あんなもん作ってる暇あったらとっととあたしに言えっての・・・。」
「・・・えっ?」
シンジは自分の耳を疑った。
〔シンジ、活動停止まで約20秒〕
アスカがシンジだけ縄を解く。
シンジが座ると、アスカが頭を深深と下げたまま
「不束者ですが・・・どうぞよろしくお願いします・・・」
と言う。
〔シンジ、活動停止まで約10秒前〕
頭の中が真っ白だ・・・
〔9秒前・・・〕
・・・アスカが目を瞑ってる
〔8秒前・・・〕
・・・僕に・・・KISS・・・をしろと?
〔7秒前・・・〕
本当にミサトさんには感謝しなきゃね
〔6秒前・・・〕
・・・アスカが舌で唇を舐めてる・・・光ってて・・・綺麗だ・・・
〔5秒前・・・〕
さぁ、碇シンジっ!逃げちゃ駄目だ・・・
〔4秒前・・・〕
わわわ・・・待ちきれずに、アスカから迫ってきた・・・
〔3秒前・・・〕
うそーー。3センチも離れてないよーーー!
〔2秒前・・・〕
あと2センチ・・・アスカの髪って・・・本当に良い匂いがする・・・
〔1秒前・・・〕
アスカの息が・・・しまった。・・・ビール飲んだままだった。絶対後でアスカに文句言われるよ・・・
〔0秒。完全に沈黙しました〕
〜happy end〜
あとがき
蒼風「初めて投稿する時は、結構緊張するもんだね・・・。」
遡夜華「じゃぁ、自己紹介から行こうかしらね・・・。あたしは「遡夜華」。年齢も生年月日も同じのご主人様のメイドよ」
羽瑠「そして私は「羽瑠」と申します。同じくお使えしています。以後、お見知りおきを・・・」
蒼風「尚、ネカマ+三人役・・・という思考は、できればして欲しくないです。」
遡夜華「実際にそうなんだから、否定できないでしょっ!このバカっ!」
羽瑠「・・・それにしても(・・・キモイ・・なんて思わないで下さい)、今回の出来栄えはピコちゃんから見てどうなの?」
蒼風「(ちなみに、本当のHNは「蒼風ピコタロ」です。)まぁまぁかなぁ?でも、動作とか微妙な心の動きが書けない・・・」
遡夜華「ま、それができりゃ、プロの作家になる事も夢じゃないけどね」
蒼風「う・・・」
羽瑠「でも、夢を大きく持つのは良い事だと思いますわ。・・・当分無理な事だと思いますが。」
遡夜華「それに、語彙が少なすぎるのよっ!もっと四字熟語を使うとか諺を使うだの、・・・兎に角、やりなさいよっ!」
蒼風「・・・・・・・・・・・ごまかした?」
遡夜華「何か言った?」
蒼風「なんでもない・・・。」
では、遅くなりましたが翔矢様への投稿です。
このサイトが、他の有名サイトに負けないぐらい大きな物になるように祈っています。
それでは・・・。
コメント
蒼風さんからの初投稿です、ありがとうございまーす。
いや〜、前から急かしていたんですが(ぉぃ)待ちわびた到着ですね〜、嬉しいです♪
次回もお待ちしておりますよ。